オンラインでリアルタイムに同期するブラウザベースのデジタルのホワイトボードサービス。
今まで全然知らなかったんですが、NECが(無料で)そんなサービスを作っていたらしいです。
で、先日このホワイトボードサービスに「Evernote連携機能」が追加されたみたいでありまして、この機会にEvernoteの記事とかいっぱい書いてるごりゅご.comで紹介してくれないか、というお話をいただき、NECにいって中の人のお話とかを色々聞いてきました。
ありそうで意外になかったホワイトボードの共有サービス
「クラウドでの共有」という分野は最近色々興味があって、Evernote共有だとかGoogleドキュメントの共有、アウトライナーの共有など、いろいろ使ってみたりしてそれなりに記事は書いていたんですが「ホワイトボードの共有」というのに出会ったのは初めて。
オンラインのホワイトボードサービスって、なんか割とどこにでもありそうな気がしてたんですが、確かに他ではほとんど見ないのかも。
まぁ、重要なのはそのサービスが珍しいとか珍しくないとかではなく「それを使って何が便利になるのか」ってところ。
その辺の「何が便利なのか」って話や、開発に至るまでの流れ、開発メンバーたちは実際どういうことに使ってるか、って話を聞いてみたんですが、思った以上にいろいろ使い道がありそうで、思った以上に面白そうなのです。
パワポ発表会の打ち合わせをなくす
まずサービス云々よりも個人的に気になったのは、そもそもどういう流れでNECという会社「クラウドサービス」みたいなものを始めたのか、というところ。
現在の開発のメンバーは「なんかこれまでとは違う新規事業を考え出せ」という目的で集められたチームだったそうです。
いわゆる、大企業の「新規開発部門」的なポジションでスタートした企画なので、最初の段階では、当然のごとくアイデアも何もない状態。
まず最初にメンバーで顔を合わせて「どういうことやろうか」っていうアイデア出しや下調べの段階から仕事を進めていったんだけど、これが驚くほど上手くいかない。
毎週1回、定期的に集まって企画を出しあっていくんだけど「アイデア出しましょう」とかやろうとしてるのに、気がつけば「パワポの発表会」になってしまう。
こんな感じのこと調べてきて、って分担したはずなのに、翌週集まったらみんなそれぞれ全然違う方向に進んでて、この1週間は何だったんだ、なんてなってしまう。
アイデア出してる段階なのに発表用の資料なんて必要ないだろ、って理由から「パワポ禁止令」を出してアイデアを集めようとしたりとかいろいろ対策も考えたんだけど、どうもなんか上手くいかない。
自分たちが欲しいものを自分たちで作った
そんな感じで難航していた新規事業部門チームですが、2013年頃にWebSocketという、ブラウザで双方向通信ができる仕組みを知り、そのタイミングで、あれ、なんか今現在俺たちが欲しいものって、まさに自分たちが困ってることを解決してくれるツールなんじゃね?
アイデアを集めて、まとめて、話を進めていくという、今の自分たちが欲しいツールを作れば、それって結構便利なんじゃね?
ということに気がついたそうです。
アイデアが出てしまえば話は早いということで、そこからサクッとプロトタイプのサービスを完成させ、社内サーバで稼働。
そのままチームメンバーでこの「オンラインホワイトボード」を自分たちで使いながら、プロトタイプを改良しつつ、同時にアイデアを固めていったそうです。
2013年ごろのプロトタイプ。プロトタイプを作ってからは一気に「進む」ようになったらしいです。
自分たちが作ろうとしてるサービスのアイデアを、自分たちが作ったプロトタイプを使いながら、自分たちでまとめていくという実になんだかとても面白い状況。
その後、2014年の11月にβサービスとしてリリースされ、2015年8月には「Evernote連携機能」が搭載されて現在に至ります。
別にEvernoteでいいんじゃね?
でもねぇ、まぁ正直、Evernoteと連携ができるようになったって言っても、Evernoteめっちゃ使ってる俺からしたら、果たしてこれの何がいいのかよくわからんのですよ。
そもそもEvernoteにも共有機能があるのに、わざわざ別のサービスを使うメリットはあるのか、と思ってしまうのが正直なところなのです。
とは言え、使いもせずに何がいいのかわからんとか言うのも傲慢だし、少なくとも開発チームの人達は「めっちゃ俺たちの役に立った」と言ってるツール。
じゃあ実際にどういうときに便利なのか。どういう用途で便利なのか。一言でこのサービスのメリットを教えてください!って聞いてみて出てきたのがこのフレーズ。
もやもやしたものをみんなでまとめられるツール
もやもやしたものを決めるときは、会って話せるのが一番いい。
でも、会えない環境でも素早く物事を決めていきたい。
そういうときに使えるのがこのホワイトボード。
そもそも、この新規サービス開発チームというのは「通常業務をこなしながら、同時に新規サービスの開拓も行っていく」という実に忙しいお仕事。
メンバーが集まって話ができるのは週に1回のみで、その状況で新しい仕事を考える」というものすごく「もやもやしたこと」を決めないといけません。
こういう「型にはめ込まないで物事を決める必要があるとき」には自由に枠が使えるホワイトボードが便利です。
そして、会えない状況においてみんなでホワイトボードを使えるようにしよう、というのがこのオンラインホワイトボードというサービス。
具体的なホワイトボード活用例
じゃあ実際に、開発者の皆さんはこのオンラインホワイトボード使ってどんなことやってますか、っていろいろ見せてもらったのが、例えばこんなものたち。
ビジネスフレームワークの活用
私自身はこの手のツール全然使ったことがないので、正直これを見ても全然ピンと来ませんが、チームメンバーでこうやってビジネスフレームワークを使って、いろいろ物事考えたりできるのは便利らしいです。
多分すごい便利なんだと思うけどわかりません。
僕がわかるのは「ホワイトボード上に画像を固定させて」「その上にメンバーそれぞれが好きな書き込みができる」ってのがポイント、ってところ。
フレームワークとして使える画像データなんかがあれば、それをサクッと使って自分の好きなように何度も使い回すことも可能。
また、リアルホワイトボードと違って、書き込んだ項目を編集したり移動させたりは簡単だし、そもそもそのトピックは誰が書いたのか、誰が編集したのか、っていうのもきちんと記録に残ります。
議事録を残す
これはいわゆる「会える時」での用途ですが、その場で議事録を書きながら同時にみんなが確認できる、ってのは議事録を作る上で非常に重要だし、これができると議事録作りの「失敗」はすごく起こりにくくなってると思います。
これ実は「リアルタイム同期」ができないとメリットが少ない用途で、言うなれば「Evernoteが不得意なところ」
我が家の「家族会議議事録」ではWorkFlowyというクラウドアウトライナーを活用してますが、これも「リアルタイム同期ができるから」というのが最大の理由。
また、上記ホワイトボードにあるカレンダーは「手動でカレンダー画像を貼ったもの」ってのが面白いところです。
チームの予定の確認とかそんなんGoogleカレンダーみたいなのでいいじゃん、て考えることもできますが、話し合いの最中に「これだけ見ればいい」っていうだけでも結構手軽で便利そう。
あと何よりも、こういうアナログのホワイトボードを使うのに近い感覚ってのは、デジタルカレンダーとはまた違った直感的なわかりやすさにも優れてる気がします。
一人だけで使うならカレンダーの画像を貼るとかありえないけど、チームで使うならこれ結構いいのかもな、って妙に感心してしまいました。
飲み会計画
カレンダーと同じく、こういうのが一番「わかりやすくて」大事なんじゃないかと思った「飲み会のプランニング」にホワイトボード。
別にこれも「日程調整だけ」ならば「同じようなことできるツール」は確かに存在してるし「俺が使うんだったら」そっちの方が便利だと思います。
でも、こういうのって結構リテラシの違いだったり、みんなが常に見てくれるかどうかわからないということ。また、地味なところで「メンバーに招待を送る」っていうそこが結構手間暇かかったりします。
そしてもちろん、日程調整のみならずお店の候補を決めたりとか、そういう用途にも使える、ってのは「何にでも使える」ホワイトボードならでは。
もちろんあらかじめメンバー全員がオンラインホワイトボードを使ってる、っていう前提条件は必要になってくるんですが、それさえ満たしてしまえば「だいたい全部これで決める」ってのは無駄に悩まず、結構楽チンですごいことなんじゃないだろうか、と感心しました。
デザインレビュー
もう一つシンプルでわかりやすい、そして割と多くの人に伝わりやすそうなのが「デザインを決める」という手順での用途。
Webサイトのデザインを人に頼んで、サンプルをここに上げてもらい、そこにメンバーが意見を書き込んでいく。
そして、バージョンごとにボードを分割(そういう機能がある)して、履歴も残しておく。
Evernote(Skitch)でも、矢印を描いたりコメントを書き込んだりはできますが、こっちだと複数のデザインを縦や横に好きなように並べて比較したりできる、ってのがポイント。
2つを拡大縮小して比べたり、一部のパーツだけ入れ替えてデザインを比較したりとかできるのは、デザイナーじゃない、発注側からしたら非常に便利だし、デザイン側も「これで見てもらえる」のは割と簡単でいいかもしれない。
ちなみに、上に載せてるのはリアルにNECのオンラインホワイトボードのページデザインを発注した時に使ってたやつ。
この手の「見た目系」のものを共有して、まとめていくという場面では、主な用途が「ノート」であるEvernoteに比べると、自由度の高さとかでホワイトボードならではの便利さはありそうです。
この記事の確認 ← イマココ!
あと、なんていうかこの記事はいわゆるPR記事というやつで、僕は一応お仕事で記事を書いているので、中の人に記事の中身を確認してもらう必要があるんですが、その中身を確認してもらうのにもこのオンラインホワイトボードを使っています。
確認してもらう記事を貼り付ける方法ってのが、アナログにHTMLを全部コピペするとか、相手に見てもらいやすくするために記事プレビューのスクショをペタペタ貼り付けるくらいしかなくて、これはまぁ正直割とめんどくさかったです。
ただ、やり取り自体はレスポンスが返ってくるのもものすごく早くて、細かい指摘とかも視覚的に確認できるおかげで、なんかこう「仕事してるぜ」感も味わえて非常に楽しいものでした。
ホワイトボード一覧の「更新情報」から更新されたホワイトボードの中身を確認できるのは、ヘビーに使ってる人にはだいぶ便利かも
Evernoteと連携する
ちなみに、オンラインホワイトボードをEvernoteと連携すると、サイドバーから目的のノートを見つけて、そこにある画像やテキストを貼り付けできるようになります。
これ、「Evernoteに溜め込んだストック」だとか「アイデアの断片」をみんなが見るホワイトボードに貼り付けて、あれこれ相談する。
そんな使い方を目指した連携機能みたいです。
ただ、画像以外の添付ファイルを直接貼ったりとか、ノートの中身を画像含めて丸ごと全部コピペするとか、そういうのはまだできません。
この、Evernoteの断片を貼り付けてみんなで相談するってのは、直接Evernoteのノートブックを共有するのとはちょっと違うメリットがあると思うので、この辺のスムーズな連携はいろいろ将来に期待したいところです。
チームでのアイデア出しや新企画の立ち上げに
いろいろと長々と記事を書いてきましたが、これ、とりあえずしばらく無料のままでサービスを提供していく予定だそうです。
NECって、営利を求める株式会社だからちゃんとなんらかの利益は出さないといかんやん、って思うんですが、今はできるだけ多くの人に使ってもらって、その上でこのサービスをもっと良くしていく段階だそうで。
ある程度うまくいったならば、基本無料にしてプレミアムな機能を有料でつけていくだとか、Evernoteビジネスみたいに「ビジネス用」として機能追加して売るとかできるのかなー、とかいろいろ考えてるみたいですが、とりあえずそういうのは後回し。
初期段階の今のうちであれば、1ユーザーの意見というのも相手に届きやすく、自分にとってより快適なサービスにしてもらえる可能性は割と高いんじゃないのかな、と思います。
チームで新企画を立ち上げるだとか、アイデア出しをする、なんてことがあるのであれば、一度試してみる価値はあるツールではないかと思います。